【スカンジナビア横断32日目】知的障がいの友達と共に過ごして初めて見えたデンマークの現実〜旅する保育士のToyBlog〜

 

 

僕が北欧に興味を持ち始めた理由は多々あるが、その中でも、乙武洋匡氏が北欧へ訪れた際にの経験談を書いた記事がとてもつよく印象に残っている。
数年前のことなので、ソースがこの記事だったかは定かではないが、僕の印象に焼き付いたのはこの一節だった。

北欧の人々は「障害者を特別視しない」ということ。町を歩いていても、交通機関に乗っていても、「お手伝いしましょうか?」と声をかけられたり、特別な対応をされたりすることはほとんどなかった。もちろん、こちらが助けを求めれば快く応じてくれるのだろうが、こちらから頼まなければ、とくに見向きもされなかった。それは、私にとってじつに新鮮で、心地の良い世界だった。

引用元:http://www.huffingtonpost.jp/hirotada-ototake/story_b_5683858.html

 

 

「北欧の人は障がい者を特別視していない。」
日本では、車椅子が目立つから注目する人もいれば、「なにか手伝ったほうがいいかな?でも、どうすればいいんだろう。」と、良くも悪くも障がい者に注目することが多く、それがない北欧を「新しい世界だった。」と乙武洋匡氏は表現していた。
「国民全体にそんな意識がそこまで浸透しているなんて、なんて素晴らしい国なんだろう!」と僕はものすごく感動したことを覚えている。

 

 

確かに、今までノルウェー、スウェーデン、デンマークを旅していて、乙武洋匡氏の体験を意識しながら街を歩いていると、確かに障がい者がじろじろ見られているなんて光景はほとんどなかった。
僕はいつも歩いたり、ヒッチハイクしたり、野宿したりなので、観光地や公共の施設にはほとんど訪れていないが、たまに図書館や駅を訪れると、スロープや車椅子のままでも乗れる広いエレベーターやトイレはどこでも整備されている。

 

 

 

まさに、理想の環境が整っている国だと思った。
しかし、その完璧とも言えるデンマークへの認識が、今日の体験で少し変わった。

 

 

 

昨日、深夜12時くらいに駅で寝ようと思っていたところ、白杖を持った盲目で知的障がいも持つと思われるグリーンランド人のラースと出会った。
僕が野宿しようと思っていることを伝えると、ラースが家に泊めてくれることになった。
が、しかし、こんな深夜に散歩したのは初めてらしく、自分の家がどこか分からないらしい。
僕もついさっき来たばかりの街なので、どこがどこかも全く分からない。
でも、ラースは戻れると言い張るので、とりあえずラースの感覚を信じることに。

 

 

 

白杖を頼りに歩いては、手探りで建物の外壁などを触り、僕に何が見えるかを聞き、約2時間色んなところを探しまわってやっとのことでラースの家を見つけることが出来た。

 

 

次の日も大雨だったので、結局2日間泊めてもらい、スウェーデン人のラースの友達とも出会った。
ラースの友達は、自分で知的障がいを持っている的なことを言っていたので、彼は知的障がいを持つことに間違いなさそうだ。
彼はお酒が大好きらしく、ラースの家に来た初対面の時から既に酔っぱらっていたが、その後もビールを飲んでかなり酔っぱらっていた。
キックボクシングが好きらしく、ラースに対して子どものように、「キックしてみろよ!全部受け止められるから!」的なことを言って、ラースも思いっきり蹴るわ、友達の方はテンション上がってドアぶん殴ってへこませるわ、それで流血するわ。
幸いケガは小さかったので、洗って止血するくらいで済んだが、一緒にいてひやひやした。

 

 

右側がラースで、左側がスウェーデン人の友達。

 

 

ラースが作ってくれたご飯。ものすごくおいしかった。

 

 

それでも陽気で面白い人達なので、一緒にビールを飲みながら色々と話していると、次第に深い話しもしてくれるようになった。

 

 

まず、ラースがなぜ盲目になったか。
もともと、若い頃は目は見えていたらしいが、ラース曰く、グリーンランドからデンマークに引っ越した後、デンマーク人にぼこぼこにされて失明したというのだ。
今まで旅をしてきて、デンマークの穏やかな雰囲気と治安の良さには絶大な信頼があったので、にわかには信じられないような衝撃的な話しだった。
そのような経験もあり、現在は道を聞いても誰も協力してくれない仕打ちを受け、彼は僕に「デンマーク人はバカばっかだ。」と、デンマーク人への不満を再三愚痴っていた。

 

 

そして、スウェーデン人の友達の方は、「俺が街を歩くと、みんな俺を恐れて俺を避けて行く。だから、俺は胸はって道のど真ん中を歩いてやるのさ!」とかなり陽気に話していたが、避けられるなんて決して気分の良いことではない。
そして、その話しは僕自身ラースと昨日深夜の街を歩いていて少し感じたところがあった。

 

 

昨日、道に迷っていたのは深夜だったものの、ちらほら人が歩いていた。
僕はもちろん、ラースも人がいると気づいたら大きな声で声を掛けていたのだが、反応してくれる人は誰もいなかった。
さすがに、目の前から来た人に目を合わせて話しかけると、反応はしてくれたが、露骨に後ずさりして避けて行く。
あんなに露骨に避けられたのは始めてだった。
向こうがラースと一緒にいる僕をどういう人だという認識でいたかは分からないが、今まで旅行者として話しかけた時と明らかに態度が違っていた。
僕も知的障がい者や浮浪者とでも思われたのかもしれない。
まあ、どう思われててもいいが。
もちろん、深夜だったというのも原因の1つとかもしれない。

 

 

しかし、翌日ラースとスーパーマーケットに行った時、ラースがレジにいる店員にデンマーク語で何かを聞いていたが、全く反応を見せない。
周りのお客さんも反応しない。
せめて声を発しているのだから振り向いても良さそうなものだが、振り向きもしない。
あからさまに無視をしていた。
その他にも、ラースがじゃがいもを買いたいらしく、僕にデンマーク語でじゃがいもって言っていたのだけど、当然デンマーク語なので分からず、ラースの発音を真似して店員さんに聞いたのだが、ラースと一緒にいるのを見ると、明らかに表情が強張っていた。

 

 

語弊を恐れずに言うと、1人でいる時よりも、ラースと一緒に街を歩いていると居心地が悪かった。
そして、おそらくそれを1番感じているのはラース達だろう。

 

おそらく、北欧では、とりわけ親切にしたり、同情したりせずとも、障害者が自由に生きていける社会なのだろう。こうした社会が成立するには、段差をなくすなどの物理的なバリアを排除することや、就労や保障によって障害者の生活基盤を安定させることなどが前提条件となる。北欧諸国は、ハードも、ソフトも整えることで、障害者をあらゆるバリアから解放してきたのだろうと思う。

翻って、日本はどうか。東京などの大都市にかぎって言えば、ハード面は世界的に見てもトップクラスだと感じる。あとは、ソフト面。多くの日本人が、「どう接したらいいかわかりません」となってしまうのは、いまだ社会のなかで障害者が「特別な存在」であり、多くの人が「慣れていない」から。まずは、障害者政策を、人々の意識を、「隔離」から「共生」へと転換することが必要になってくる。

引用元:http://www.huffingtonpost.jp/hirotada-ototake/story_b_5683858.html

と、乙武洋匡氏はこのように述べているが、ラース達の様子を見ていると、デンマークでもまだ知的障がい者に対しては隔離の意識が強いように感じる。

 

 

僕が持っていた完璧なデンマークのイメージは見事に打ち砕かれた。
しかし、デンマークに失望し、嫌いになったというわけではもちろんない。
これまでのブログでも書いて来た通り、デンマークから学ぶべきことが多いのは事実だ。

 

 

僕が感じたのは、乙武洋匡氏の言葉を借りると、ハード面ではなく、ソフト面である人々の障がい者理解の難しさ。
確かにハード面は素晴らしい。ラースも1人暮らしには十分な程の1LDKの家に住んでいる。
しかしながら、障がいの種別によっても関係があるのかもしれないが、ソフト面の人々の意識を変えるということがいかに難しいか。
それは、世界でトップクラスに福祉制度が整ったデンマークでも成し得ることがことが出来ていない。
完璧に見えたデンマークにも、まだ課題はあるということだ。

 

 

乙武洋匡氏も「たった数日間の滞在では気づくことのできなかった綻びだって、多々あることだろう。」と述べているが、まさに数日間の滞在では絶対に気づくことの出来ないデンマークの現実を垣間みることが出来た。

 

 

ラース達が住んでいるのは、知的障がい者が集まっている集合住宅のような場所なのだが、おそらく、このラース達が住んでいる場所が分かっても、なかなかこちらからアポを取って行くことは難しいだろう。場所は別のところだが、実際ヒッチハイクで乗せてもらった時に、知的障がい者施設で働いている人にお願いしたらだめだった。

 

 

偶然ラースと出会い、実際の生活の場に入り込むことが出来たのだ。
2日目に分かったが、デイケアの職員は僕を路上生活者だと思っていたらしい。笑
ラースがその辺の路上生活者を拾って来たと思ってたのかな。

 

 

これらのようなことは、きっと幼稚園にも言えることなのかもしれない。
ハード面の福祉制度や園の設備は整っていても、実際の子ども達との関わり方は、案外日本で僕が今まで見て来た園の方がレベルが高いと感じることもある。
関わり方の件をラースの話しで言うと、ラースの家には訪問型のデイケアサービスのような感じで、何時間に1回か職員が来て身の回りの世話をしているが、その時、ラースが常用薬を飲む時に、コーラで飲ませたり、ビールで飲ませたりしていた。
飲ませると言っても強要しているわけではないが、すぐそこに水道があるにも関わらず、食卓に置いてあったコーラやビールをそのまま差し出して、それで薬を飲むように促していたのが衝撃だった。

 

 

 

このように、北欧の福祉や教育は見習うべきところも多いが、盲信せず、中立的な立場で、見習うべきところとそうでないところを分別していかなくてはいけない。
今回は図らずも現場に入り込むことが出来た訳だけど、やはり現場に入って自分の目で見ることの大切をひしひしと感じる経験になった。

 

 

 

前回の記事

【スカンジナビア横断31日目】ロラン島のど真ん中!!マリボってこういう街〜旅する保育士のToyBlog〜

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筆者プロフィール

原田智広

1994年3月3日茨城県生まれ。関東学院大学人間環境学部卒業。高校時代に「俺、大学に入ったら辞めそうだな。」と、せめて興味のある子どもに関する大学に行こうと消去法で進学するが、想像以上に保育にはまってびっくりする。その後、自身の生い立ちや大学時代の1人旅の経験から、世界中老若男女問わず、誰でも保育園に遊びに来れる保育園×ゲストハウスを考案。大学4年時、その保育園とそれに基づく世界一周プランを延べ2000人以上の前でプレゼンし、保育ドリームプランプレゼンテーション共感大賞、TABIPPO世界一周コンテストDREAM最優秀賞受賞。現在は世界一周中。

 


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